I Fiumi (河)

ナポリを引き上げ、一時帰国の途に就く。航空会社は乗り慣れたルフトハンザのミュンヘン経由。

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ナポリ空港はボーディングブリッジの数が少ない。ほとんどの便が、ターミナルから徒歩またはバスで乗客を移動させ、昔懐かしいタラップで機上へ上がる。機種はA321-100)

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(上昇中の機内から見たナポリ市北西部。下の赤丸が有名な考古学博物館で、旧市街の北西隅に位置する。青丸がお世話になったアパート。中心市街地まで徒歩20分であった)

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カンパーニャ州北部あたりで目にした大規模灌漑施設。左下の水路から水を導水し、円形?にループする水路で水を耕地に行き渡らせる仕組みと考えられる。周辺の乾燥地との土地利用の差は歴然たるものがあるが、当然ながらコストは農産物価格に反映される)

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(左がイタリア最大の河川であるポー川、右がオーストリアを東西に流れるイン川。おなじアルプスの融雪水を集めて東流する河川でも、雰囲気が違うのはパダノ・ベネタ平野を悠々と流れる前者と、アルプスの狭い河谷を急ぐ後者の違いだろう。飛行機に乗っていると河川は格好のランドマークとなる)

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 (イン川、ドイツアルプスを越えると、飛行機は急に高度を下げてミュンヘン空港を目指す。降下中の機窓から見えるバイエルンの農業地域は肥沃で利水にも恵まれている。局地的な灌漑地域を除いて粗放的な農地が広がる南イタリアとは、土地生産性が大きく異なることは一目瞭然である。様々な特例措置や農業補助金は準備されているにせよ、自然条件が異なる南北ヨーロッパが、単一通貨、関税撤廃という条件下で競争することの難しさが実感できる光景であった)

 

イタリアもドイツもシェンゲン条約国であるため、ナポリミュンヘンはパスポートコントロールが無い。このため出国審査をミュンヘン空港で行うが、ここで一悶着。出国審査の担当官曰く「いつヨーロッパへ入りましたか?」「3月31日です」「ヨーロッパにはビザ無しでは90日しか滞在出来ないことはご存じですか?」「私はイタリアの滞在ビザと滞在許可書を持っています」「この6月のナポリの印は何ですか?」「それはクロアチアから戻った時のものです」「おや、7月にもロンドンへ行ってますね?」「イギリスにも10日ほど滞在しました」「貴方はイタリアで何を勉強しているのですか?」「地理学です」「頻繁に、シェンゲン条約国外に出る理由は何でしょうか?」「たまたまです」。

要するに、担当官が「ヨーロッパ」と言ったので、こちらも「3月末」と答えたのだが、彼女が知りたかったのは「いつ、最後にシェンゲン条約地域に入ったか」なのだ。条約国のビザと滞在許可書がない限り、域外居住者はこの日から90日以内にシェンゲン地域から退去する義務が生じる。この問題は、イタリアのビザと滞在許可書(見せてないけど)があれば問題ないのだが、次いで彼女が不審に思ったのは、シェンゲン入国から90日になる直前の6月末に、(シェンゲン域外の)クロアチアに短期旅行していることだった。スロベニアクロアチアへの短期旅行は、ビザを持たない旅行者がシェンゲン域内での滞在期間をリセットするための常套手段だからだろう。最初から「シェンゲン域内に最後に入ったのはいつですか?」と聞いてくれれば、7月のロンドンを答え、問題なく通して貰えたのかも知れない。結局、ミュンヘンの出国審査で5分近く会話の練習をさせていただく。

ミュンヘン-東京は、いつも通り「通路側」の座席を確保し、ひたすら寝て帰る。東京はひたすら蒸し暑い。温度よりも湿度にノックアウトされました。

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(「そこは、私の寝床なのでこざいます・・・」。冷たい玄関の三和土は猫の寝床と化していた)