Il muro (城壁)

ナポリの語源が、古代ギリシャの植民都市(Neapolis:新都市)に由来することは有名。そのギリシャから17世紀のスペイン支配時代に下る、都市の歴史の重層性を見る巡検があると聞いて参加することに。

主催団体Siti Realiは、ナポリ市と地元企業が共同出資する三セクナポリの歴史資産の管理運営を市から委託され、都市史や都市計画に関する市民参加型excursionを毎週末実施している。

http://nuke.sitireali.it/ (残念ながらイタリア語のみ)

今日のコースは「城壁の外の都市史」。古代ギリシャ時代に建設された城壁の大部分は、ローマ帝国を経て18世紀初頭に至スペイン支配時代まで引き継がれ、都市の内と外を分けるバウンダリーを形成しました。巡検はイタリア語のみの説明。Maria先生が同時通訳をして下さいました。

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(集合場所のSan Gennaro門。ギリシャ時代の城壁を踏襲し、スペイン支配時代に設けられた城門。城門の上に「勝手に増築」された住居が付帯する)

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(組織としてのSiti Realiは出資を受けているが、案内者はボランティアとの由。今日の案内してくれたCarlo氏は建築家で、都市計画が専門のほか、地下遺跡の発掘にも携わる)

コースは、ギリシャ時代の城壁、地下鉄工事の出土品、17世紀スペイン 支配時代の邸宅のリノベーション、最後がローマ時代のカタコンベ

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(オリジナルの城壁は、1950年代の戦後復興期に破壊された由。もったいないが、日本の戦後復興も似たような事をしてたよなあ。)

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(17世紀に多くの移住者がスペインから入り、城壁の外側に多くの集合住宅が建設された。階段を斜めに走る梁として利用する設計デザインは、この時代の流行とのこと。左は18世紀にリノベーションされた建物。右はリノベーションされなかった別の建物)

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カタコンベ:地下墳墓。墓地は城壁の外に置かれ、確認されているだけで50を超えるカタコンベが現存するそうな。今回見学したものは、1685年に住宅建設現場で偶然発見され、その後忘れられていたものが1982年の地震で再発見された。被葬者(夫婦?)のレリーフの一部が残る)

日本から来たのだからと、excursion終了後、特別に未公開の発掘現場(果物が描かれた玄室のあるカタコンベ)に案内いただきました。

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その後、Carlo氏、Maria先生と、歴史資産の維持について意見交換。重要なことは、有権者であり納税者である地域住民が、自らの都市の歴史を理解し、現存する資産の重要性を理解すること。そうでないと保全・利活用は進まないという点で意見が一致。