La epifania (顕現祭)

遡る話ですが、ちょうどパリ滞在中に迎えた1月6日が、キリスト教の顕現祭(公現祭とも)の祝日。異邦人の救い主(キリスト)の誕生を知り、星に導かれ、東方の三博士がベツレヘムを訪れ、誕生から12日後の幼子キリストと対面したのがこの日とされています。聖書で有名な「東方三賢人の礼拝」がこれにあたり、ノートルダム寺院も、この日まではクリスマス飾りが残されていました(翌日撤去されたかどうかは確認していませんが・・・)。もともとクリスマス(誕生日)を重視する西方教会と、顕現日(救世主キリストの存在が東方三賢人によって顕らかにされた日)を重視する東方教会との妥協の産物といわれ、この間が12日間のクリスマス期間と定められました。

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本来、ヨーロッパ諸都市のバーゲンは、顕現日から始まるのだそうです。ナポリを含めイタリア南部は、1月最初の週末(今年は1月3日)にスタートしますが、これはちょっとフライングの由。たしかに、顕現日を超えるとナポリのクリスマス飾りも消灯され、徐々に撤去を迎えます。1月24日はバーゲン開始から3週間が過ぎ、割引率もエスカレートした様に感じます(気のせいか70%引が増えたような)。

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(クリスマス飾りが消灯されたvia Toledo。週末の夕方とあって人は一杯)

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さて、バーゲンセール(Saldi)で賑わうvia Toledoを抜けた先にあるのが、ヨーロッパ最古の現役歌劇場であるサンカルロ劇場。24日晩の出し物は、ジョルダーノのアンドレア・シェニエ(Andrea Chenier)。指揮はN響もしばしば振るネルロ・サンティ。2013年秋、NHKホールでシモン・ボッカネグラN響定期、演奏会形式)を聴いて以来のサンティ翁(1931年生まれ)、足どりが相当危なっかしく、昨晩も狭いオケピットをあちこち掴まりながら歩いてきましたが、棒そのものは溌剌としていて、毎度ヤマ場をアッチェラントで追い込んでいく音楽づくりは流石でした。ピットのオケも、こういう曲は十八番で上手い上手い。

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昨日の公演は、定期演奏会(本来、年間指定席を購入した会員を主体とする演奏会)の1回売り。テアトロ・サンカルロ天井桟敷は1ボックス3人なので、夫婦など2人が購入した後の1席が売れ残り、一回売りに回ることが多い。昨日の席も、公演直前に買ったとは思えない5回中央近くの良席でした。

今回のお隣さんは、オペラ大好きなおばあちゃんの2人連れ。「日本人なのにイタリア語話せるの?」といういつものべんちゃらから始まって、歌劇場の歴史、指揮者サンティの来歴、3階バルコンのあそこに座っているおばあちゃんは往年の名コントラルト歌手××氏といった話まで、それはそれはものすごい知識を披瀝された。で、彼女の至言は「オペラは大方悲劇ね。悲劇に限る。ハッピーエンドなんてオペレッタよ。悲劇は美しい(i tragici sono bellisimi)」。ところで、貴方オッフェンバックは好き?と話は尽きずに繰り出される・・・。

「アンドレア・シェニエ」は、主人公が断頭台の露と消えるという点で、プーランクの「カルメル会修道女の対話」とともにフランス革命を題材とした悲劇オペラの双璧。ただ、断頭台へ向かう主人公の内面とひたすら向き合う後者にたいして、アンドレア・シェニエは、「愛のために死ぬ」というテーゼが一枚看板で、内面分析や葛藤がほとんど無いまま、美しい音楽とともにラブストーリーが足早に進行するので、奥様方は紅涙を絞るが、聴いていて気が楽なことも確か。そういえば、宝塚もアンドレア・シェニエを上演している筈。原曲そのものが宝塚の雰囲気に近いので、これを再構成するのは結構難しかったのではないかと勝手な想像。

 

1月25日夜現在、イタリアのテレビは、緊縮財政反対派が勝利したギリシャ総選挙の結果で持ちきりです。最終的にはユーロ圏からの脱退をも口にした急進左派連合SYRIZAの大勝利は、EUに衝撃を与え、同じ問題を抱えるイタリアも他人事ではありません。ギリシャが緊縮財政を拒否し、メルケルの救済スキームが崩れれば、ただでさえ好材料の少ないイタリア経済も大きな打撃を受けることになります。現実、大規模な再開発事業の多くをEUからの投資に依存するイタリアの都市政策は、根底から考え直さざるを得なくなるでしょう。ちなみにTV(イタリアの24時間ニュース番組Rai24)に出演した識者は、「今回の結果はポピュリズムの勝利であり、チプラス(SYRIZA党首)にユーロ脱退までギリシャを導く力は無く、今後は支援者と現実との妥協を進める」と、イタリアに楽観的な観測を語っているようです(おそらく、そう言ってるんじゃないかな~的なヒアリング能力です)。ただ、円安で悩む欧州滞在者としては、ユーロに不安要因が出来て、円/ユーロレートが円高に振れないかな、と不謹慎なことを考えています。

 (実際、今朝の円/ユーロレートは、130.6075円までユーロ安が進み、まだしばらくはユーロ安の気配。)