Il pullman (長距離バス)

イタリアの都市間輸送は、日本以上に長距離バスPullmanが鉄道を圧倒。とりわけシチリアは、本土(イタリア半島)の幹線と違って高速鉄道がなく、路線も湾曲の多い海岸路線や速度の出ない山岳路線が主体のため、高速道路を走るPullmanに客が流れ、イタリア国鉄(正式には上下分離の運行会社Treitalia)は不採算路線となったローカル線の運行本数を軒並み減らしています。また、休日には運転本数が限りなく減少する(通学輸送を行わないためダイヤが削減される)ため、事実上Pullmanに都市間輸送を依存している状況です。

今回、シチリア西端のトラパニから、シャッカ、アグリジェントを経てカターニアまで、シチリア南西海岸線1泊2日の移動を全面的にPullmanのお世話になりました。とりわけアグリジェントからカターニアへの移動は、鉄道の「日曜運休」による「運行本数ゼロ」区間がはさまることになり、Pullmanのお陰で何とか移動。Pullmanについては、「停留所の場所がわかりにくい(しょっちゅう移動する)」「どこで切符を買って良いか分からない」「停留所のアナウンスが無い」などの戸惑いの声が『地球の歩き方』にも紹介されていますが、慣れれば便利な乗り物です。

また、イタリアは鉄道運賃が安く、これと並行するPullmanも競争価格を意識した運賃を導入するため、走る距離に対して(日本の感覚では)価格がべらぼうに安いことも魅力。

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(高速バスの切符。いっちょ前に二次元バーコードが付いているものから、酒屋のレシートと変わらないものまで千差万別。二次元バーコードが付いていても、改札は「穴開けパンチ」である)

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(始発駅では、会社ごとの切符売り場(Biglietteria)が整備されているケースが多い。もっとも左の写真のように、バスの間隔が空くと閉まってしまうBiglietteriaもある。ETNA Transpoti社のバスに乗ろうとしてBiglietteriaが閉まっており、慌てて隣のSAIS社に駆け込んだら、「出発の20分前には開くから安心しろ」と言われた)

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(途中駅では、停留所近くのバールなどで代行販売しているケースが多い。写真のバールは、シチリア南部に手広く路線網を持つAST社の切符を代行販売している旨のステッカーが掲示されている)

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(停留所は、大抵バス会社の名前を記した小さな看板が目印。時刻表まで付いてるこの停留所はサービスが良い方で、小さなバス会社の看板だけ、という所が多い。途中駅ではそれすら無い場合も多い。よく言われることだがPullmanの停留所を探す最低限のイタリア語は知っておいた方が無難かも知れない)

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(トラパニのバスターミナルに入線したアグリジェント行きのPullman。これもよく言われることだが、時間になると何のアナウンスもなく静かに発車してしまう。とにかく行先と発車時間は把握しておかないと泣きを見る)

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(左はトラパニ-シャッカ間のドライバー。距離が長い場合、上りと下りのバスが中間駅で待ち合わせ、そこでドライバーが入れ替わるケースもある。それぞれが周知の区間を往復するダイヤが組まれていることになる。3月のシチリアレモングラスの花盛り。あたり一面黄色い絨毯を敷き詰めように咲いている)

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シチリアは高速道路建設のラッシュ。高速道路はもともと上下分離。鉄道も上下分離したとはいえ、ガラガラのローカル線では、旅客1人運行あたりの運行コストがバスよりはるかに高くつく。高速道路網の整備とともにPullmanはますます鉄道の強敵となることは疑いない。それにしても、経済規模に対して高速道路網の整備状況は過剰ではなかろうか。そこにはマフィアもからんだ建設利権の存在が常に囁かれている)

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(シャッカは温泉保養地として有名だが、日本のようなレジャー温泉ではなく、医師の処方箋にもとづく医療施術としての温泉施設(ただしエステはある)。という訳で温泉には縁がなく、1時間半の乗り換え時間をカモメを眺めながら過ごす)

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(最後はアグリジェントのコンコルディア神殿。かつて理工学部の建築の先生に、「建築物として保存状態の良いギリシャ神殿を見たければ、ギリシャではなく南イタリアですよ」と言われたことがあったが、このアグリジェントのほか、セジェスタ(シチリア)、パエストゥムカンパーニャ)などに非常に状態の良い神殿遺跡が残されている)