Berlino ③ (ベルリン ③)

オランダへ発つ前に、Tacheles(タヘレス)の跡を見に行く。タヘレスは、ベルリンにあったアート活動拠点兼商業施設。老朽化した旧百貨店の建物をアーティストが「不法占拠」したスクォッター型集積として名を馳せた。地理学では、池田真理子さん(筑波大学)が論文にまとめています。

なお、不法占拠という言葉のニュアンスは、日本で想像するものとは少し様子が異なる気がする。Tachelesは、もともと戦前のユダヤ人街にあり、旧東側にあった施設の権利関係が壁の崩壊を経て複雑化し、当面の開発が難しい状況下でアーティストが入り込んだ。この「入り込む」段階はたしかに「不法」であるかも知れないが、彼らは世論を味方につけて、地権者による排除を阻止し、自主管理組織を構築していった。この段階になると、地権者とアーティストの間に、ある種の合意形成が出来ていったと考えても良いだろう。

いずれにせよ、アート活動拠点という意味でも、大都市において不動産資本にオルタナティブな提案を突きつけたという意味でも、世界的に名を馳せたタヘレスだが、その再開発計画が具体化し、2012年9月4日に閉鎖された。当日の記事がシュピーゲル紙の電子版に残されている。

http://www.spiegel.de/international/zeitgeist/berlin-artists-squat-tacheles-is-cleared-after-legal-disputes-a-853868.html

しかし、それから2年余りがたった2014年11月末現在、タヘレスはなお建物が残され、再開発そのものの具体的な動きは見られなかった。

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(閉鎖後2年余、表だった動きが見られないタヘレス)

このタヘレスのほど近くにあるのが、「お洒落な」アート系商業集積として注目されているHackeschen Höfe(ハッケーシャーホフ)。Höfは、字義的には中庭を持つ館だが、この中庭を上手に連絡通路に使って、8つの建物を結び、それぞれの建物にテーマ性を持たせたテナントミックスを試みている。アートとマーケティングが上手に融合して成功した事例かな。

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(中庭を上手に使っている)

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(Hackeschen Höfeの見取り図)

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(それぞれの建物Höfに、テーマ性を持たせている)

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(写真家のオリジナル写真を展示即売するLUMAS。数十ユーロから一万ユーロ超まで)

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ピクトグラムがお洒落な雑貨屋)