Padova (パドヴァ:北東への旅③)

ラヴェンナからフェッラーラを経由してパドヴァまではローカル線の旅。イタリア国鉄にお世話になりました、と言いたいところだが、1905年に設立されたイタリア国鉄は、2001年には持株会社化され、路線管理と列車運行の上下分離が実施された。路線管理(下部構造)を担当するのはイタリア鉄道会社(Rete Ferroviaria Italiana)、列車運行(上部構造)を担当するのが、トレニタリア(Trenitalia)などである。

イタリアにおける旧国鉄網(FS)の上下分離は、EU諸国の共通鉄道政策(1991年~)の影響が大きい。もともと、西欧諸国は陸上の国境線でつながり、古くはオリエント急行やTEE(Trans European Express:ヨーロッパ国際特急)の歴史を紡いできた地域。そのような看板列車でなくとも、都市間特急Intercityが日常的に国境を越えて運行され、大都市のターミナル駅では(昔ほどでないにせよ)いろいろな国の長距離列車が停まっている。したがって実質的な上下分離の歴史は長い。

もとより、今日的な上下分離は、看板列車としての国際特急の運行にあるのではなく、長期的な投資回収が必要な下部構造を上部構造から切り離し、手厚い公的支援を前提に路線管理を行うことで上部構造の収益性を高めることにある。また上下分離を行うと、複数の運行会社(上部構造)が下部構造を共有し、競争や棲み分けを通じたサービスや収益性の向上が期待できる。国や自治体が管理する空港(下部構造)に使用料を払い、JALANA(上部構造)が競争を繰り広げる航空交通の世界がこれに相当する。

イタリアも、全国ネットを持つトレニタリア(旧国鉄の運行部門)のほか、高速列車イタロを運行するNTV(Nuovo Trasporto Viaggiatori)や、ローカル線を担当する州単位での運行事業体が下部構造を共有している。また、ローマーパリ間の夜行寝台「Thello」は、トレニタリアとフランスの運行会社ヴェオリア(Veolia)社が共同運行している。

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(フェッラーラからパドヴァ間でお世話になったトレニタリアのローカル列車)

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(フェッラーラ駅に停まるエミリア・ロマネア州の運行会社が管理するローカル電車)

 

ジョットの大作が描かれたスクロヴェニ礼拝堂を経てたどり着いたパドヴァの中央広場は、ちょうどバレンタインデーの週末。街のランドマークとなる建物をスクリーンに見立てた映像イベントはあちこちで実施されているが、イタリアのそれは気のせいかとてもセンスが良い。

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パドヴァ中心部のシニョーリ広場の映像イベント。背景の建物は旧総督官邸で、中央の時計塔はイタリア最古のもの(再建)とされる)