Monaco ② (ミュンヘン ②)

今回、ミュンヘンで見学した再開発地域の1つが、ミュンヘン東駅に近いHaidhausen(ハイドハウセン)地区。戦災での焼失を免れたがゆえに、戦後の経済成長期に相対的な市街地の老朽化が顕著となり、行政主導でジェントリフィケーションが進められた地域です。

ハイドハウセンは、「市の中心」であるマリエンプラッツから真東に直線距離で1.7kmほど。マリエンプラッツからはオデオンスプラッツでの乗り換えを含め、Uバーンで3駅目(M. ウェーバープラッツ下車)です。この再開発は日本の地理学でもいくつか紹介論文がありますが、19世紀に住工混在地域(低層階に小規模工業、上層階が住宅)として発展し、中心市街地の70%が焼失した第二次大戦でも被災を免れました。その結果、焼失地域に新たに再建された市街地に対する相対的な老朽化が進み、家賃の下落、(外国人労働者を主体とする)低賃金労働者の増加、住環境の悪化とドイツ人有子世帯の流出、という悪循環が進みました(藤塚吉浩「ミュンヘンの歴史的発展と旧市街地の再生」;阿部和俊編『都市の景観地理:大陸ヨーロッパ編』)。

現在、ハイドハウゼン地区は、保存状態の良い伝統的(19世紀的)家屋の保存、その他の老朽家屋の部分撤去と公営中層住宅の新設、歩道の整備による歩行者動線の確保などを進め、高齢者と有子世帯を優遇する居住政策と相まって、ドイツにおけるインナーシティ再開発の成功事例とされています。

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(「市の中心」マリエンプラッツに面した聖ピーター教会の塔上から望むハイドハウゼン地区。円内は地域の中心にあるヨハニス教会の塔)

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(地区のランドマークの1つ、ウィーン広場。ミュンヘン中心市街地側の入口にあり、カフェなど新たな集客装置が整備されている)

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(改修された19世紀の建物と再建された建物が調和するプレイジング通り)

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(有子世帯の回帰を狙って、新設された公営住宅の内側には「遊び場」となる広場が設けられている)

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(1977年から始められた再開発事業は現在も継続している。左は地区内に掲出された都市計画図、右は現在の再開発地区。地下を掘削し、駐車場のスペースを地下に確保している)