La ristrutturazione (再開発)

パレルモにおける都心の再開発(ジェントリフィケーション)の現場を視察しました。パレルモ旧市街の基本的な街並みは、17~18世紀のスペイン支配時代に形づくられました。老朽化した建築環境、細く日当たりの悪い路地、(部分的には)第二次大戦のシシリー上陸作戦時の戦禍なども重なり、中産階級の郊外流出、都心の空洞化、低所得層の流入という問題が顕在化していました。

この10年ほど、パレルモ市が主導する都心のジェントリフィケーションが進んでいます。スペイン時代の建築環境は観光資源でもあるので、外観にはあまり手を加えず(あるいは建て替える際に古い外観を再現し)、内側をリノベーションする形で利用環境の向上を図り、行政の本音としては社会階層の入れ替えを図っています。

ジェントリフィケーションが、「治安の向上」「税収の増大」「観光開発」などのプラス評価と、「低所得層や高齢者の社会的排除」というマイナス評価の両面を持ち合わせていることは周知の通り。パレルモのそれも、(旧住民や低所得層による)不法占拠が出来ないように、立ち退きを終えた建物は窓や出入り口をすべてセメントで塞ぐというものものしい開発が進んでいます。

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(伝統的市場の1つ、ヴッチリア市場に近い再開発現場。観光客の動線であるフェリーチェ門(旧市街の東の門)と、上記の市場を結ぶ線上にあるため、外観の保全には十分に留意しているとのこと。手前の区画は再開発が終了した地区で、小洒落た飲食店が入居している。中程は工事中、奥の区画は老朽化した建物を取り壊し中)

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(取り壊し中の建物は、出入り口、窓をセメントで塞ぎ、ベランダをすべて外す、侵入防止用の鉄条網を窓に張る(正面右の建物の2F、3F部分)など、不法侵入対策が厳重にとられている)

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(新たに建設された建物には、パレルモ市(Citta di Palermo)の主導による再開発であることを示す表示が出されている)

 

一方、パレルモの「中心市街地問題」は、マフィアと無縁では無いとの指摘もしばしばなされます。日本のヤクザと同様、表面的には一般の経済活動を隠れ蓑にすることが多くなったマフィアにとって、不動産ビジネスは利ザヤが大きく、いわゆるマネーロンダリングも行いやすい。要するに、ヤバい金で郊外の土地を買い、これを宅地開発で中産階級に販売するという方法です。郊外の宅地開発の規制が厳しいイタリアの中で、パレルモの郊外は日本の大都市並みにスプロールが進んできました。マフィアへの潮目が変わったのは、マフィアを厳しく追及した2人の検事が1992年に相次いで爆殺され、マフィアを容認する部分があった市民の意識が大きく変わってから。市議会が簡単に宅地造成の許可を下ろさなくなり、代わって市主導による中心市街地の再開発が進んだという訳です。

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(モザイクで有名なドゥオモを持つ、パレルモ南郊8kmのモンレアーレ。海岸添いのパレルモ市中心部から広がったスプロールが山裾を埋める。このため、パレルモからモンレアーレに向かう道路「via Caratafimi」は渋滞で有名)

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パレルモ検察庁前の広場の階段には、マフィアに殺害された検察官の氏名と殺害された年月日が刻まれている。右の階段の左がファルコーネ検事、右がボルセリーノ検事。二人の名前は、「対マフィア戦争」の象徴的存在として、パレルモ国際空港の正式名称になっている)

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