Caserta (カセルタ)

ナポリへ戻ってから2週間強、ほぼ毎日イタリア語の専門書を読み続ける。400頁近い商業地理学の本で、もちろん(!)飛ばし読みだが、各章の抄訳を作り、著者陣である数人の先生と議論するポイントをレター(これは英語)に整理して、マリア先生に託した。根詰め作業はこれで一段落。

この2日間は天気もまずまず。ナポリから日帰り可能で、気にかかっていた場所に足を運ぶことにした(いつでも行けると考えていると、結局最後まで行けないことが多い)。カセルタの王宮はその1つ。

カセルタは、ナポリの北、約30kmにある都市。もともとは小さな山上都市に過ぎなかったが、1752年にブルボン朝のカルロ7世が山裾の平野に王宮の建設を決定、ナポリ市内のダンテ広場の建設でも知られるカルロ・ヴァンビテッリが建設総監となり、1780年まで28年の年月をかけてフランスのベルサイユ宮を模した宮殿と庭園が造営された。

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(王宮の部屋数は1200余。右の大広間を含め「スターウォーズ」エピソード1、2でアミダラ女王の宮殿として撮影に使用された)

王宮もさることながら、付属の庭園にしつらえられた水路と噴水の規模と豪華さは、本家のベルサイユ宮殿を凌ぐと言われる。丘陵地形を利用して人工の滝を設け、ここから数カ所のバロック式噴水をアクセントに挟みつつ、王宮正面へと到る水路は、全長3kmにおよぶ。それにしても、傾斜地形を利用して水路・噴水を配置する造形の妙において、イタリア人の能力は何と優れているのだろう。性格は異なるが、ローマ東方のチボリにある「エステ荘の噴水」も、同様の傾斜地形を見事に利用した噴水の組み合わせで知られる。こちらの訪問も楽しみ。

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(王宮側から起点となる滝を望む。正面手前はデルフィニ(イルカ)の噴水)

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(滝側から王宮を望む。水路両側の道は馬車道であるが、現在では王宮-水源下間の邸内バスも運行されている)

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(水路の起点は傾斜地形を利用した人工の滝であり、この高さの滝口を維持するため、王宮の建設総監であったヴァンビテッリは、その水源を約40km先に求めた。水源から滝口に到る水路の緩傾斜を維持するため、途中の谷には水道橋の架設が必要であり、その最大のものが、長さ529m、高さ55.8mに及ぶAcquedotto Carolino(カルロ王の水道橋)。ローマ時代の水道橋を模したデザインを持つこの橋は、王宮などとともに1997年、世界遺産に指定されている)

Acquedotto Carolino - Wikipedia

時間があったので、王宮造営以前の古いカセルタ(Caserta Vecchia)に足を運ぶ。崩落の痕跡も生々しい丘陵の上に佇むのがCaserta Vecchia。かわいらしい城門を持つ山岳都市でした。石灰岩地形が多い南イタリアでは、地下の浸食が進むためか、こうした「ズボッ」とした崩落地形をたまに見かける。

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(中世で時代が止まったようなCaserta Vecchiaの南門の塔。カセルタ駅前から旧カセルタまで、103番のバスで30分ほど。バスは、双方の始発点を毎時20分に出発し、ちょうど真ん中へんですれ違うという、ロープウェーのような運行ダイヤだった)

 

おまけ。カセルタからの帰途、ナポリ駅で見たアートイベントのポスター写真。自撮仏陀

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