Itaria Centro ② Assisi (イタリア中部 ② アッシジ)

アッシジへはペルージャからプルマンで日帰り。ペルージャアッシジ間は、鉄道で20分、バスは55分。料金も鉄道の2ユーロに対してプルマンは4ユーロかかる。しかし、いずれも山上都市であるため、山裾にある鉄道駅までは市バスを利用するか、3km近い道程を上り下りするかしかない。その料金と時間を加味すると、山上都市の入口(いずれも城門近くの広場)まで運んでくれるプルマンに軍配が上がる。

アッシジの山裾を上っていくと、聖フランチェスコ教会の偉容が眼前に広がる。徹底して清貧を貫いた聖人フランチェスコの思いと、この豪壮な教会建築のギャップに戸惑いを感じる。上下2層からなる大教会は、聖人の死から2年後の1328年に、まずロマネスク・ゴシック様式の下層が着工し、わずか2年後の1330年に竣工している。次いでゴシック様式の上層が1339年に着工し、これも1353年には竣工を見ている。バチカンの号令のもと、膨大な財力が投入されたことは想像に難くない(年号は、いずれも教会発行の「公式」ガイドによる)。

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アッシジの聖フランチェスコ教会。南東ー北西方向を軸線とする丘陵の斜面に広がるアッシジの北西端を、さらに人工的に延長して2層の教会が建てられている。右は下層の入口。有名なジョットの「聖フランチェスコ伝」のフレスコ画は上層の壁面を飾っている)

あまり信心深くない自分のお目当ては、上層の壁面を飾る28枚の「聖フランチェスコ伝」。パドヴァのスクロヴェニ礼拝堂とともに、これでジョット畢生の2作品を目にすることができた。聖フランチェスコの聖人伝は、1986年に小澤征爾が指揮する新日本フィルによる「アッシジの聖フランチェスコ」(メシアン作曲)の日本初演を聴きに行く際に付け焼き刃で「勉強」したきり。大方は忘れていて、「衣服を両親に返すフランチェスコ」「教皇インノケンティウス3世の夢に現れるフランチェスコ」「小鳥に説教するフランチェスコ」などの「名場面」だけが、ジョットの画とともに頭に残っていた。今回ゆっくりと28枚のフレスコを見て、「こういう人(物語)だったのか」と再認識した。

 

さて、アッシジは同じ山上都市でも、ドーム状の丘に中心市街地を持ち、ここから張り出す尾根上に都市機能が広がったペルージャとは異なり、山の斜面の中腹にあるやや平坦な地形を上手に利用している。アッシジの背後の山上には城塞(Rocca)が設けられていた。

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(山上のRoccaと、ここから見下ろすアッシジの風景。アッシジが、丘陵の中腹にある平坦地を上手に利用していることがわかる。右端は、女子修道会を開いた聖キアラを祀るサンタ・キアラ教会。ペルージャ同様、白色と桃色の2色の石灰岩を交互に積んだ造形が美しい)

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(写真中央は、聖フランチェスコ教会と、ローマ帝国以来の中央広場であるコムーネ広場を結ぶ目抜き通りのvia San Francesco。この通りを中心に、これと並行する何本かの「東西道路(正確には南東ー北西道路)」が発達している。アッシジは斜面の街であり、この並行道路を結ぶ路地は、多くが「階段道路」(scara、gradini)になる。この造形(写真の右など)も見ていて飽きない。

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コムーネ広場を中心に、西に聖フランチェスコ教会、東にサンタ・キアラ教会があり、この間のツーリストの動線は非常に太い。このため、沿道の1階部分には全く空き店舗がなく、土産物店、飲食店、貴金属店等が入居している。長野や琴平のような、典型的な「参道」である)

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アッシジでもう1つ見たかったのが、ローマ時代の円形劇場(Anfiteatro)の跡。斜面を利用したAnfiteatroの跡は、そのまま残されて遺跡として保全されたものも少なくないが、平地や山上都市のそれは、中世以降(それ以前?)、住宅地に再利用されたものが多い。アッシジのAnfiteatroも、その輪郭の名残を道路に残しつつ、客席部分は宅地に転用された。東京・目黒の元競馬場の地割りによく似ている。この種の「再利用」で、一番面白い事例はルッカではないだろうか)

ということで、ウンブリア州の2都市を堪能し、シエナに向かう。今回、花の都フィレンツェは残念ながら夜景のみ。

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