Wiener Urlaub ④ Budapest (ウィーンの休日④:ブダペスト) 

中欧諸国の首都の中では、なぜかハンガリーブダペストだけ足を踏み入れていない。ウィーンからは鉄道(インターシティの特急)で3時間の距離なので、1日遊びに行く。とはいえ、ウィーンで思いついた「出張」なので、資料も観光ガイドも無い。インターネットでいくつかの基本情報を確認し、あとは行き当たりばったりで7:48発のインターシティに乗る。ブダペストに10:48着。

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ブダペスト・ケレチ(Keleti)駅。ブダペストにはいくつかの頭端駅があるが、ドイツ、オーストリアからの国際列車のほとんどはケレチに着く)

まずは、駅の観光案内所で地図を入手し、いくつかの目的地の位置を確認する。8時間あればだいたい見て回れる筈である。また、ハンガリーはユーロ圏ではないので、フォリントへの両替が必要となる。しかし、「国際駅」にしては観光案内所がお粗末に過ぎる。窓口は1つきりで、あまりやる気の無さそうなおじさんが受け答えをしている。渡された地図もお粗末であった。無料の観光地図とはいえ(であるからこそ)、「一見さん」であるツーリストに優しい地図が求められる。個人的には、観光地図の評価ポイントは、1)縮尺・方位、2)通りの名前(ヨーロッパでは必須)、3)本図とは別図となっている交通路線図(本図で行きたい場所の最寄り駅を探し、その駅への経路を路線図で探すという使い方が一般的であろう)、4)中心部の拡大図、5)主要な観光地、施設、モニュメント等の位置情報、6)(市電網がある場合)その路線網と電停の位置、等である。さて、ケレチ駅の案内所で渡された地図は、2)の通りの名前を除いて、残る情報は一切捨象されている。驚くべき事に、本図の中には地下鉄の路線網と駅の位置こそ書かれているものの、肝心の駅名が入っていない!!

両替については、いくつかの旅行者ブログの情報を総合すると、1)ブダペストの空港、主要駅ではW社が経営する「I」という両替屋が独占的に開業している(他の両替商は排除されているに等しい)が、「I」の交換レートは非常に悪い、2)地下鉄の自動販売機ではクレジットカードが使える、との事である。前日にウィーンでチェックした為替レートは「1ユーロ330フォリント」程度であった。案の定、ケレチ駅でも「I」が独占的に出店していたが、1ユーロの交換レートは220フォリントである。そこで、件の地図を入手した後は、地下鉄の1日券をカードで購入の上、さっさと中央市場へ出かける。中央市場は、ケレチ駅から地下鉄で4駅。といっても、件の地図に駅名は入っていないので、駅の数を数えて下車する。

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(屋根が美しい中央市場。市民の「台所」としてのみならず、観光名所でもある。1階部分は食品、2階部分に衣料品、日用雑貨品のほか、軽食を提供する屋台風の飲食店とレストランが入っている。観光案内所と両替商も1階にある。中央市場の両替屋は16時で終了するが、この周辺には遅くまで営業している「真っ当なレート」の両替商も多い)

中央市場にも観光案内所があり、ダメ元で立ち寄ってみると、こちらには、何と「official」と銘打たれたCity Mapがあるではないか。先に挙げた6条件のうち、6)市電の路線網と電停の位置を除く5条件はすべて満たされている。なぜ、これを駅の案内所で配布しないのだろうか。ちなみに両替屋も、市場内では1ユーロが手数料込みで315フォリントとなる。ここで両替。どうもブダペストは、空港やターミナル駅をさっさと後にし、早々に市中へ出た方がよろず無難な様である。

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(ケレチ駅で入手した「使えない観光地図(左)」と、ほぼ完璧な「Official City Map(右)」。左の地図は、観光地図としては無能極まりないが、バーガーキングをはじめ、多くのスポンサーのCMと、その位置情報が掲載されている。スポンサーの意向を反映した左のような地図は当然あっても良いが、国際駅の観光案内所(という公的な場所)で配布されるべき地図は右だと思う。ちなみに、左の地図で一番目を引いたのは、表紙の下にCMを載せているスポンサー企業の「buddha-bar(仏陀バー)」であった。最初、地名のBudaかと思ったが仏様の由。「Siddharta Cafe」という姉妹店もあるそうだ。南無阿弥陀仏

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(ブダの高台、「漁夫の砦」から眺めたおなじみの風景。ドナウ川を挟んで、手前がブダ、向こう側がペスト。河川の渡津に発達した対向集落が、1つの都市として発展した典型例とされている)

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(ペスト地区の聖イシュトヴァン寺院から北東方向を望見する。ブダペストは一度トルコ軍に占領されており、中世都市としての面影はほとんど残されていない。現在の中心市街地には、19世紀の二重帝国時代に建設された建物群の中に、社会主義時代の建物が散見される。3kmほど郊外へ出ると、社会主義時代に建設された大規模な団地が軒を連ねている)

ブダペストの地下鉄1号線は、ロンドン、イスタンブールのそれに次いで世界で3番目に古い地下鉄で、1896年に開業した(日本の第一号は、現在の銀座線・浅草-上野間で1927年)。約4.4kmの営業区間で11駅という可愛らしい路線だが、当初から電車方式で営業した地下鉄としては世界初となり、世界遺産に登録されている。

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(道路を開削して敷設した地下鉄1号線。階段の下に見える層がプラットフォームである)

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(車両が小さいこともあってか運転頻度は非常に高く、約2分間隔で運行されている)

 ブダ側、ペスト側をそれぞれ一回りし、ドナウ川に映えるブダペストの夜景が見たくなる。漁夫の砦などブダ側から眺める夜景はさぞ見事であろう。しかし、日の長いこの季節、夜景を待っていては終電に間に合わないので、残金を再び中央市場付近で両替し、18:10のインターシティでウィーンへ戻る。「次の機会」にフォリントを持っていても良かったが、そう考えて死蔵されたままの各国通貨が相当量あるので今回はあっさりと換金。ウィーン着21:07。まだ明るさが残る市内のビアホールで一杯。

 

 余談だが、ブダペストにもエリーザベト皇妃(こちらでは王妃か)の像はいくつか存在する。その1つが、ドナウ川にかかるエルジェーベト橋(Erzsébet híd)のブダ側、ドブレンテイ広場にあるこの像。オーストリーア・ハンガリー二重帝国の王妃であり、とりわけハンガリーを好んだ(ウィーンを嫌った)との逸話を残す彼女のこと、橋の名前を含めてランドマークとなることには何の不思議もないが、観光動線からは少し離れており訪れる人の数は少ない。エリーザベトについては、ヴィスコンティ監督の映画「ルードヴィヒ」でロミー・シュナイダーが演じた王妃があまりに印象が強く、常にこのイメージが重複する。

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ブダペスト市内にあるエリーザベト王妃の像。台座にErzsébet Királyné 1837-1898と彫られている)