Fermata Municipio (ムニチピオ(市役所)駅)

10日ぶりにナポリへ戻り、地下鉄に乗ったら、どうもいつもと様子が違う。駅が「1駅」多い!

と書いてしまうと演出過剰の感があるが、6月2日の共和国記念日に合わせるように、地下鉄1号線のムニチピオ駅が完成していた。実は、5月中から、慣熟運転と思われる臨時停車や、艤装工事のための終電繰り上げが頻繁に行われ、観光案内所で配布される地図にも5月からフライングで新駅が掲載されるなど「秒読み」状態ではあった。しかし、実際に乗ってみて「1駅多い」というのは、まだ不思議な感覚である。

下の路線図で、大きく湾曲して走るオレンジ色の線が1号線であり、図の右端にあたる中央駅(Piazza Garivaldi)から2駅目が新設されたMunicipio(赤矢印)である。市役所前広場の駅であるとともに、ナポリ港の旅客船ターミナルにも近く、これまで港湾観光都市ナポリの泣き所だった港と中央駅、中心市街地を結ぶ公共交通の「要」として期待が集まっている。

ただし、突貫工事で開業にこぎ着けた駅のこと、内部の工事は「見切り発車」状態で、肝心の駅と旅客船ターミナルを結ぶ地下道も「現在進行形」である。

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(すでに5月から配布されている観光地図。中央駅(Piazza Garivaldi)から2駅目にMunicipio駅が記入されている)

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(ムニチピオ駅のエントランスと改札口。ナポリの地下鉄は、落書きだらけの街とは対照的に「きれいに」使われているが、どこにも増して新駅はピカピカ)

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(駅と、旅客船ターミナル(正面の白い建物)を結ぶ地下道はなお建設中。これまで、「夜ナポリに船で着くと、ホテルまでが物騒」「タクシーにぼられた」「(唯一の公共交通機関である)バス路線は良く分からない」など、観光都市ナポリの泣き所であっただけに、この地下道への期待も大きい)

 

それにしても、地下鉄1号線は、なぜあんなに湾曲して走るのか?さして広くはないナポリの街中に、あたかも巨大な「Z」字を描くように路線が敷設されているが、これはひとえに地下にあるギリシャ・ローマ時代の遺跡を避けるためである。あらためて上の地図を見ると、Museo(考古学博物館前)から一旦南下する1号線と、(Museoに接続する)Piazza Cavourからそのまま中央駅に向かう2号線(赤い路線)との線形は非常に対照的だが、この2つの路線に囲まれた「台形」の部分が、ほぼ旧ローマ時代の城壁の内側にあたる。

Stazione Toledo (トレド駅) - Dov'e il centro urbano?

以下の写真は、ユネスコの予算を得てナポリ中心市街地で行われている建物の修復作業の分布図であるが、図中の黄色い破線が「旧城壁」であり、多くの修復作業はその内側で行われていることが理解できる。

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(ちょっと見にくいかも知れないが、25プロジェクトのうち、23プロジェクトまでが旧城壁の内側で実施されている。最初の図の地下鉄路線と、上図の旧城壁の外周部分を走る道路がほぼ一致することに注意されたい)

 さて、目の良い方は、不思議に思うかも知れない。「ムニチピオは城壁の外側にあるじゃないか。何が工事を遅らせたの?」と。はい、こんなものが出てしまったのですね。この場所は、古代、中世まで港湾の一部だったのです。

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(「船3隻分の残骸と防波堤の木の杭がムニチピオ広場から発見された」とある)