I mercati ambulante a Napoli (ナポリの移動市場)

ダルマチアから戻り、ナポリ東洋大学でミーティング。今回は、(待望の)A先生も出席され、2時間近く、ナポリ都市政策、商業立地、郊外大型店の影響、都心の商業空洞化と低所得者対策について意見交換を行う。「それでもまだ、ナポリの都心の商業は元気だよね。イギリスとか、サッチャー時代の規制緩和で都心の商業が地盤沈下し、メージャー以降のてこ入れで都心の大規模再開発を続けたのは良いけれど、地代負担力が高い業種しか生き残れない、都心の低所得者が追い立てられている、都市間の顧客争奪競争が激化している、で大変だもんね」というのが共通見解。

議論の終わりの方で、カターニアでも話題になった移動商店(その集積としての移動市場)の話題になる。地代負担力が低い零細店舗でも都心に出店可能なシステムとしての移動市場は、イタリア(少なくとも南イタリア)の都市商業を考える上で外すことが出来ない、という話題になった際、「ご近所」の学部長先生が、「ナポリにもでかいのがあるよ」と教えてくれた。「行ったことがありますよ」と答えると、どうやらそれは本所から枝分かれした「支所」らしい。「君の家から徒歩15分!(彼は私の家を知っている)」と地図を書いて下さったので、翌日見学に行く。市場の名前はAntignano Pubblico Mercato。カターニア同様、朝8時から午後1時までの移動商店街である。

場所は、いわゆる高級住宅地Vomeloの中腹。私のアパートからは、ちょうど丘を120度ほどぐるりと「まいた」位置にあった。もともと、新興住宅地の商業核として戦後すぐに公設市場(Mercato Rionale : 直訳は地域市場)が行政によって整備され、その門前に自然発生的に生まれた移動店舗の集積が、市場に発展したらしい。最後にやってきたのがスーパーのカルフールというのが面白い。でも、雑貨屋や八百屋は、価格競争でも品質競争でもカルフールに負けていない。

f:id:kenjihas:20150716222119j:plain

(老若男女が顧客となる移動市場。カターニアと同じくテント方式の出店で、時間になると20分程度で鮮やかに撤収していく)

f:id:kenjihas:20150716222320j:plain

(母体は戦後すぐに生まれた公設市場。今も元気で、八百屋などはこの公設市場の店が、13時までは外の移動市場にテント店舗を出している)

f:id:kenjihas:20150716222437j:plain

(公設市場にある酒屋さん。提携農家から仕入れているハウスワイン。この値段とは思えないくらいキレがあって美味しい!)

f:id:kenjihas:20150716222614j:plain

(左のカルフールは、移動市場の「賑わい」に惹かれて2000年代に参入したという)

 

さて、ナポリ生活もあとわずか。ヴェネチアへ送る荷物と日本へ送る荷物をより分ける作業も佳境です。

f:id:kenjihas:20150716222855j:plain