Sant' Agata de' Goti (サンタ・ガータ・ディ・ゴーティ再訪)

サンタ・ガータ・ディ・ゴーティは、このブログの表紙の写真の街。ナポリも残りわずかになった昨今、比較的近いので10年ぶりに再訪することにしました。ちなみに表紙の写真は10年前の撮影です。

最短経路は、ナポリから王宮で有名なカセルタまで鉄道で小一時間。ここからバスで50分。ただし、このバスが曲者で、1日2便!しかも、サンタ・ガータからの帰路便は13時20分が最終便となる。このため、ナポリから日帰りを試みる場合、10時20分カセルタ発(11時10分サンタ・ガータ着)、13時20分サンタ・ガータ発という経路しか選択の余地が無い。まあ、レンタカーを使えばナポリから片道1時間半の距離なんですけどね。

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(カセルタ駅前で待機する10時20分のバス。バス会社はサンタ・ガータに本社があるローカルバス会社で、サンタ・ガータから出てサンタ・ガータへ戻る「往復ダイヤ」を1日2回運行しているらしい。午前便の復路と午後便の往路を利用することになるため、どうしても現地滞在時間は限られる)

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(途中で、あのカセルタ王宮の水路に水を供給しているVanvitelliの水道橋をくぐる)

サンタ・ガータ・ディ・ゴーティは、直訳すれば「ゴートの聖アガタ」となる。一風変わった地名だが、その歴史は曲折がある。もともとこの地域は、歴代のローマ皇帝(とりわけアウグストゥス)に愛されたナポリの後背地にあたり、アッピア街道も近くを通過しているため、ローマ帝国の直轄領だった。ところが、(西)ローマ帝国の弱体化とともに、6世紀頃にはゴート人が支配する地域となった。

ただし、de' Gotiの名はゴート人に由来するものではなく、13世紀にこの地の領主であったフランス人貴族De Gothから来ていると言うのだから話はややこしい。この支配者は、1268年にフランス・アンジュー家のシャルル・ダンジューがカルロⅠ世としてシチリア王に封じられ、ナポリに拠点を構えた(ナポリアンジュー朝)ことと関係している。14世紀に入ると、サンタ・ガータは「アビニョン捕囚」で有名な法王クレメンス5世の封土に組み込まれるが、このことも、当時のアビニョンナポリアンジュー家の領地であったことと無縁ではなかろう。

現在のサンタ・ガータは、ベネヴェント県に属する人口1万人余りの小さなコムーネであり、火災等もあって中世の建築物や文化財はほとんど残されていない。しかし周辺地域には、カンパーニャ州内陸部を代表するブドウ種であるFalanghinaやGrecoのブドウ畑が広がっており、かの作曲家ヴェルディもこの近郊に農場を所有していた時期がある。

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(サンタ・ガータの「目抜き通り」となるvia Roma. 綺麗な石畳の上を、中学生くらいの団体が闊歩していたが、社会科見学かな?) 

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(サンタ・ガータは山上都市であり、都市内の井戸水は貴重品であった。このため、古代~中世にかけて、洗濯は城壁の下にある二本の河川添いにしつらえられた「洗濯場」へ出かける必要があった)

サンタ・ガータ再訪のもう1つの目的は、地元のワイナリー、Mustilli(ムスティリ)を訪問すること。10年前にマリア先生らと訪問し、醸造所を見学した際に購入したファランギーナが絶品だった。しかし、今回は季節外れということで醸造所は閉まっており、アグリツーリズモ利用者だけが見学できる由。残念。

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 (アグリツーリズモの看板がかかるムスティリの正面玄関。宿泊すると、ブドウ畑や醸造所が見学できるらしい)

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(で、別口を探し、自家製ワインの小売りをしているエノテカ(酒屋)を見つける。その名もOPERA。店番をしていた若旦那(父親が現在の社長の由)に、ヴェルディと関係あるの?と聞いたら、そうではなく、先々代(創始者?)の趣味だったらしい)

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(タンクに入っているワインは量り売りしてくれる。ファランギーナ種で、1リットルなんと1.5ユーロ。空のワインボトルを持参すると、760ml詰めて栓をしてくれる。試飲させてと若旦那にお願いし、ファランギーナをコップ酒で一杯。これで50セント。ご馳走様でした)

サンタ・ガータは、建物が河谷から城壁状にせり上がっている西側が美しい。下の写真は、太陽が少しでも西に傾くのを待って13時過ぎに西側から撮影。

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(10年後も変わらない景観でした)