Viaggio nell' Inghilterra ⑤ Il patrimonio della rivoluzione industriale (イギリスへの旅 ⑤ 産業革命遺産)

リバプール空港の入国審査は、久しぶりに「英会話の勉強」程度に長い審査だった。イタリアから、イタリアの滞在ヴィザを持つ日本人が、ロンドンではなくリバプールに降り立つという状況が珍しかったのか(怪しかったのか、興味本位なのか)、イギリスでの滞在目的から始まって、滞在予定期間、滞在都市、イタリアで何を勉強しているのか、と質問が続いた。滞在目的はもちろん「観光」で押し通したのだが、滞在都市を「リバプールマンチェスターバーミンガム」と話した所で、「具体的に何を観光するのか」と念押しの質問が続いた。都市の再開発と都市政策との云々・・はまた面倒を起こしそうなので、「産業革命の遺産を見学に来ました!」と明るく答えると、入管のご婦人は、「産業革命の遺産は沢山あるが、どのような遺産を見たいのか?」と続いた。「えーと、マンチェスターリバプール間は1830年に世界初の営業鉄道が開通しました。駅は博物館になっているはずです。マンチェスターはBlack Countriesを支えた運河網が保存されています。私は地理を勉強しているので、個々の工場施設のみならず、都市間を結ぶネットワークに興味があります(not only~but alsoは重要です)」。これでようやく無罪放免。

どこぞの国と同様、イギリスでも産業革命遺産は都市ツーリズムの1つの資源となっている。しかも当地は産業革命のメッカ、中でもマンチェスターバーミンガムは18世紀~19世紀の栄光を物語る建物、遺物に事欠かない。ということで、いくつかの博物館を見学してきました。

マンチェスターの白眉は、旧リバプールマンチェスター鉄道の駅施設をリノベーションした科学産業博物館。産業革命当時の機械類が動かせる状態で保存されており、蒸気機関車や力織機など「世界史の教科書」でお目にかかった機械が目の前で動くところがミソ。

f:id:kenjihas:20150726184505j:plain

マンチェスターの科学産業博物館。旧リバプールマンチェスター鉄道のマンチェスターリバプール・ロード駅と構内の倉庫施設を改装している)

f:id:kenjihas:20150726184927j:plain f:id:kenjihas:20150726185010j:plain

f:id:kenjihas:20150726185045j:plain

(博物館内では30分刻みで、さまざまなデモンストレーションが行われていく。このデモンストレーションは、19世紀初頭の機械を用いた綿花~綿糸~綿布という一貫工程の説明)

f:id:kenjihas:20150726185308j:plain

リバプール・ロード駅の本屋建物。プラットホームと線路のほか、一等客車の出札口が当時のまま保存され、他の部屋は博物館の展示室に利用されている)

f:id:kenjihas:20150726185511j:plain f:id:kenjihas:20150726185540j:plain

1830年の開業時に、有名なスティーブンソンのロケット号(旅客用)とともにリバプールマンチェスター鉄道の貨物輸送を支えたプラネット号のレプリカ。貨物積載用の引上げ線で「お客」を乗せ、保存されている旧リバプールマンチェスター鉄道の線路を500mほど往復する。レプリカとは言えメカニズムは本物で、立派に釜をたいて走る。旧線路は現在の本線となお繋がっており、その直前まで運行するため、運が良いと現在のリバプール行特急とすれ違う)

バーミンガム運河は、現在もその大部分が水路として残され、いわゆるウォーターフロントの再開発地として人気を集めている。都心に近い再開発地域から工場の廃墟が残るプチ郊外まで、市営の観光ボートが周遊している。

f:id:kenjihas:20150726190102j:plain

f:id:kenjihas:20150726190338j:plain f:id:kenjihas:20150726190415j:plain

(市営の観光ボートで周遊した郊外の運河と工場跡地(上)。バーミンガム運河(この運河に限らないのかも知れないが)には、ループと呼ばれる迂回路がいくつも開削されている(地図・左下。観光ボートの周遊コースを示す)。このループの目的は、産業の発展で増加した水上交通を捌くだけでなく、新しい運河を開削することで工場用地を増やし、この用地を工業資本家に売却することで、運河会社が開削資金を調達したらしい。現在の鉄道会社と郊外住宅地の関係と同じ方程式である。現在は、プレジャーボート(有名なナローボート)で行き来する観光客も増えている(右下))

ニューカッスルから1時間ほど南下すると、バイキング侵攻以来の歴史を持つヨークがある。ヨークはイギリスの国立鉄道博物館で有名。3大人気の車両は、スティーブンソンのロケット号(レプリカ)、蒸気機関車の世界最高速度記録202km/hを持つマラート号、そしてロンドン~エジンバラ間の幹線輸送を支えたフライング・スコッツマン号だが、フライング・スコッツマン号は静態保存から動態保存に転換するため入場中で展示はなし。

f:id:kenjihas:20150726191452j:plain

(ヨークの旧機関庫を利用した国立鉄道博物館の正門)

f:id:kenjihas:20150726191608j:plain

ターンテーブル上のロケット号のレプリカ。ここはいつも人が絶えない)

f:id:kenjihas:20150726191711j:plain f:id:kenjihas:20150726191737j:plain

(左は蒸気機関車の世界最高速記録を持つマラート号、日本の新幹線0系も展示されている。ただ、中で流されているJR東海制作のプロモーションVTRは、ちょっと古くなって残念(300系のぞみが最新鋭だった時代の映像である))

イギリスの国立博物館は、ロンドンの大英博物館やナショナル・ギャラリーも含め、原則入場無料。ただし「推奨3ポンド」の寄付を歓迎しています。でも3ポンド以上は十分に楽しみました。

 

おまけ

マンチェスターの再開発地域に1996年に建設されたコンサートホール・Bridgewater Hallは、マンチェスターが誇るハレ管弦楽団の本拠地。なにげにホールの前を通ったら、楽団の中興の祖である指揮者ジョン・バルビローリの胸像が建っていて嬉しくなる。彼とハレ管弦楽団のコンビで録音された曲はあまた残されているが、とりわけシベリウスの全集とディーリアスの管弦楽曲集は昔からの愛聴盤。

f:id:kenjihas:20150726194420j:plain